炭鉱の風は一方通行
最近北海道もやっと少しずつ春らしくなってきて、窓を開けられる日もたまにあるくらい、外は暖かくなりました。
内窓を開けると外窓にはカメムシが一匹…
カメムシが二匹…
カメムシが……
そんな春。(どんな春)
出会いと別れ、変化の春です。
窓を開けると風がふわ~っと入ってきて気持ちいいですね。
風っていうのは「自由きまま」っていうイメージもあります。
朝と夕方では風向きが変わっていたり、建物の間では強くなったり、何かにぶつかってグルグル回ったり。
だけど、炭鉱の風は違います。
目次
炭鉱の中の風は一方通行
炭鉱は基本的に「燃料を掘る」場所です。
※炭鉱とは?については▼で
地下を深いところでは1,000mより深いところまで掘っていくのですが、当然地上からそんなに離れていたら新鮮な空気はありません。それに、大型の機械で石炭を掘るので石炭の粉や石やら砂やらで汚れた空気が舞い上がります。さらに、地下にはガスなどが発生している場合もあります。
そのため「空気の流れを考えること」は炭鉱にとって非常に重要でした。
坑道(地下トンネル)を作る人は風が入る「入気」と風が出ていく「排気」を念入りに計算し、炭鉱の内部(坑内)では風の計測もまめにすることが決められていました。
実際、トンネルの入り口(坑口)はそれぞれ「入気」と「排気」の役割が明確に割り当てられていて、人や物資の運搬に主に使われていた住友赤平炭鉱の立坑やぐらは「入気」
その道路を挟んですぐ反対側には「排気立坑」がありました。
(その他にもいくつもの入気用の坑口、排気用の坑口がありました)
そのため斜坑(斜めに地下に入っていくトンネル)の坑口はそのため2つセットで作られることが多いです。
一度わたしは現役の炭鉱内に入ったことがあるのですが、入気の坑口から入って坑内を歩いて行くと、背中から風がビュービューと吹いて寒いほどの場所もありました。
炭鉱内の各坑道(トンネル)は大きな扉で仕切られている場所もあります。風の流れが変わってしまうので、その入り口と出口の扉は決して同時に開けてはいけません。その扉を抜けると一気に空気が変わり、蒸し暑かったり、風向きが違ったり、本当に綿密に風が管理されていました。
坑内に入った風は、出口まで振り返ることはない
地上にいると「自由気まま」な風ですが、ひとたび炭鉱の中に入ると来た道を戻ることなく出口へと向かいます。
これまで割と何かにぶつかる度に行く道を変えては、たまに戻ったり、止まったり、消えそうになったりしてきた私からすると、
なんだ、風のくせに立派だな!!
なんて思っちゃいます。
地上を吹く風の風向きはコロコロと変わります。
トラブルにぶつかったり、人の動きにぶつかったり、歴史や風習にぶつかったり、大きな何かにぶつかったり…。
本当に地上の風の行く先は分かりません。
私が今立っているのは地上だし、もう空知に地下を掘っている炭鉱はありません。
だけど、今わたしは地上の建物好きっていう場所から、地下深い炭鉱の中まで興味を広げて、とっくに坑口の中へと足を踏み入れてしまっている状態です。
この先もきっといくつかの障害にぶつかることも多々あるんだろうと思います。
きっと大変なんだろうなぁ。
だけど今は、戻ることなく出口に向かう風でなければならないのだろうなぁ…。
そんなことを思っています。